仕事で大量に使うシリウスを買いに世界堂へ。帰りにパルコの雑貨屋・
スミスを覗いたら、ト音記号クリップと、8分音符クリップというのが売っていて、タップ合わせにちょうど良いかもと思い購入。思ったとおり、紙の固定具合は良好。くわえ部分の奥行きが2.5cmあり、ゆったりしている。調べてみたら、
ナカノという会社の商品だった。1個189円。
同じ日、やはり仕事や自分の作品で大量に使う上質紙として
ビックマルチペーパーの全サイズを1箱ずつ注文。いつも業界最安値と宣伝されている。この紙は紙をぺらぺらめくるごとにちょっと特徴的なしわができ、スキャンだと問題ないがカメラ撮影だと、ライト2灯でもかなり、しわの陰影ができる。試写の時すこしびっくりしたが、これはこれで味があるかもと思うようになった。以前は、リコーのPCC用紙(1990年代の呼称)、近くのスーパーや文具店などで買うときは、
コクヨ・FSC認証紙などを使っていた。それぞれの紙には、深い特徴とユニークな個性がある。
紙といえば、業界では以前、ナカザワという会社の同じ専用紙を約9割の会社が等しく使っていた。この紙は非常に描き心地がよく、何十年もの間、快適な作業環境が続いていた。ところが、2000年頃、アニメのデジタル化・仕事の海外流出・国による法定管理化がほぼ同時に起こると、あらゆるパート・使用用具が一般ビジネス、投機の対象となってしまい、私の知る限り、2003年頃、新しい紙企業が参入、営業を本格化させた。
新しい紙は、古参の現場職人の使い勝手より、海外データ通信・スキャンに適した線が優先され、長期の訓練無しに描けるというふれこみだった。ナカザワの紙に何十年も慣れている者にとっては、非常に描きづらかった。ちょうど、選挙の投票用紙のような鉛筆ののり具合で、それをさらに厚くしたような紙だった。透過性も悪いので、ライトボックスの光量も上がり、目の負担にもなる。
私が、シリウスでできる絵の具のムラと、庶民的最低価格の紙でできるノイズを自分があえて仕事や作品に取り入れているのは、素朴であったものづくりを、金勘定だけの投機対象にされてしまった事への静かな抗議も含まれている。
ちなみに前述のナカザワの専用紙は、表と裏の表面がまったく同じように見えるが、慣れてくると、表裏の判別がつくようになるという、ちょっとした楽しみもあった。